リアルタイム・コミュニティの危機

TechCrunchの創設者Michael Arringtonは、最近の個人的出来事もふまえてリアルタイム・コミュニケーションの危険性について触れている。
従来は実名主義には炎上に対する抑止力がある、と思われていたが、匿名/実名というポイントは、コミュニティの暴走を止める要素にはなりえなくなっている。

本来こういうことは起きないはずだと思われてきた。なぜならFriendFeedは匿名掲示板ではないからだ。ほんの数年前、専門家は大量に匿名でコンテンツを生成するサービスの普及がオンライン暴徒を生むだろうと予測していた。

<中略>

しかしFriendFeedのユーザーの大部分は簡単に実世界における身元が判明する。このサービスの本来の目的はユーザーが自分のブログ、写真、各種SNSTwitterなどのコンテンツをひとつにまとめてストリーミングできるようにするというものだった。つまり、ユーザーが誰であるか、はっきり判別できることを前提としたサービスなのだ。ところが、突然、人々は平気で実名で憎悪を口にし始めた。

FriendFeedと梅毒の歴史を考える―実名SNSも暴徒の温床化しつつある

特に、FriendFeedを槍玉に上げた理由を彼は次のように指摘している。

FriendFeedだけを悪役にするのはおかしいという反論もあるだろう。他のサービス、特にTwitterはもっとユーザーが多いし、似たような問題を抱えている。しかしTwitterでの会話は大規模に集約化されていない。イランの革命に近い抗議運動のような巨大な動きにでもならない限り、Twitterでは直接のフォロー関係だけで暴徒が形成されるとは考えにくい。しかしFriendFeedではすべてのコメントが1ページに表示される。そして全員がそれを見ることができる。これははるかに暴徒を生みやすい環境だ。

FriendFeedと梅毒の歴史を考える―実名SNSも暴徒の温床化しつつある

あるサービス(この場合はFriendFeedだが…)の制度設計上の問題というよりは、社会性やネット・リテラシーの問題のようにも思われる。日本でも同様の「炎上」問題は時々散見されるし、韓国の場合は、もっと深刻だ。古き良き(?)パソコン通信におけるコミュニティ問題も根は同じだったはずだ。

しかし、技術的インフラの進歩で「リアルタイム性」が強くなったために、情報の伝播力はますます強力になり、ポジティブな効果もネガティブな効果も抑止力が効きにくくなってきている。

Twitterに代表される「リアルタイム検索」とFriendFeedのようなフィードに依存した「リアルタイム・コミュニティ」の問題は、現時点でのネットの光と闇を象徴的に見せてくれている。

ノイズの高いデータ・フローと整然と見せたいデータ・ストック(アーカイヴ)の相対的な関係が、ネットの世界に新しい潮流を生み出しつつあるといえるだろう。