2007年のビジネス書2冊

一昨年秋に読んだ「フラット化する世界」もイノベーションに関する素晴らしい本だったが、昨年読んだビジネス書の中では、次の二冊が示唆に富んでいた。
ウィキノミクス」は、「フラット化する世界」の長所・短所をふまえた議論が展開される。IT(Web 2.0的)イノベーションがビジネスモデルの流れにどういう影響を与えているか?を具体的に知ることができる。


ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ

不特定多数に開かれたもの造りが始まった。「フラット化」の次に来る、真のもの造り革命である。ウィキノミクスの行動原理は四つ――オープン性、ピアリング、共有、グローバルな行動。活発な“事業エコシステム”として数十万(あるいは何百万)ものパートナーが協力するという、今まで夢でしかなかった生産の形態が登場しつつあるのだ。先行するP&G、ボーイング、BMW、レゴ、メルク、IBMはすでにその大きな配当を享受している。
この潮流の敗者たちは、「単にウェブサイトを立ち上げ」、「囲った“庭園”をつくり」、「自らのみで革新を進め」、「データとソフトウェアを頑なに守ろうとする」。しかし、この大波に乗じる勝者たちのほうは、「活気あるコミュニティを立ち上げ」、「開かれた“広場”をつくり」、「ユーザーを巻き込んで革新に取り組み」、「データとソフトウェアを全世界に公開してみせる」。そして、本当の変革はこれから始まるのだ。

Amazon.co.jp: ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ: ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ, 井口 耕二: 本

キーストーン戦略」は、ITトレンドに限らず、現在のビジネス・トレンドを総括的に分析した結果を抽出している。
著者の一人がマイクロソフト出身のため、マイクロソフトの最も優れた(優れていた?)事例紹介が多少鼻につく点があるが、全体的にはバランスのとれた内容になっている。
支配的な企業やニッチ企業ではなく、その中間でエコ・システム全体に影響力を持つ「キーストーン」企業(戦略)が最もイノベーティブである、という論調だ。


キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム

従来の経営戦略論の外部環境とされてきた「産業(構造)」や「市場」に対して、本書では企業戦略の外部環境を企業の内外がシームレスに結びついた「ビジネスネットワーク」あるいは「ビジネス・エコシステム」(ビジネス生態系)というフレームワークから、戦略パターンを提示する。また、ビジネス・エコシステムにおけるキーストーン(リーダーシップ)戦略を明らかにし、支配的な企業やニッチ企業の戦略パターンを一般化する。ビジネス・エコシステムはダイナミックに構造変化する産業や市場の境界線をどう捉えるか、どのように企業戦略を展開していくか―
現在進行形のテーマに対して大きな示唆を与える。

キーストーン戦略

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ

 
キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)

キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)