読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本は、これから

本は、これから (岩波新書)

本は、これから (岩波新書)


印象的な文章が数多く詰まった新書。池澤夏樹の編によるもので、執筆者たちは基本的にあいうえお順(唯一の例外は、吉野朔実のマンガ)で並んでいるが、そう感じさせない構成になっている。以下に、そのいくつかを抜粋する。

P.18
石川直樹
紙の書籍であれば、バックパックの奥底に押し込んでも大丈夫だし、氷点下でも炎天下でもそこに刻まれた文字が消える心配はない。砂塵が舞う砂漠でページをめくることもできるし、埃まみれの安宿でも安心して本を開くことができる。


P.40
上野千鶴子
デジタル・アーカイブの最大の問題は、何年かおきに媒体の移転を継続しつづけなければならないコストがあまりに膨大なことである。


P.44
内田樹
私たちは物語を読んでいるときに、つねに「物語を読み終えた未来の私」という仮想的な消失点を想定している。(中略)電子書籍はこの「読み終えた私」への【小刻みな接近感】(筆者傍点)を読者にもたらすことができない。


P.52
岡崎乾二郎
一言で言えば本は時空を超えることを目指すけれども、雑誌は反対に情報が位置づけられるべき(使用される)特定の時間、空間――場の「現在性」こそを、提示するものである。


P.66
桂川
奇妙なことに、「コデックス革命」以来の書物の歴史に逆行するかのように、ウェブサイトや一部の電子ブックにおいてページ概念が消滅している。ウェブデザインの初期には、「ホームページ」という言葉に象徴されるように、ページ概念がかろうじて留められていた。それがブログにとって代わられ、テクストの「巻物化」が顕著になった。ウェブ上では、「何ページ、何行目」という「座標軸」を使った知の共有ができない。さらにTwitterにいたって、「巻物」すら解体され、「竹簡・木簡」へと先祖返りしつつある。


P.107
柴野京子
この10年ほどの間のもっとも大きな変化は、ビジネスの成果ではなくて、それがもたらしたもののほうにある。つまりここで肝心なのは、本を手に入れるということが、「手に入りうるすべての本の中から、自分で選ぶ」ことを意味するようになった、という点なのではないだろうか。


P.163
長尾真
グーテンベルクの印刷術はコンテンツを紙という媒体に移す技術の革命であったが、電子書籍の場合は著作物というものの内容・本質を根本的に変革する技術が出て来たということで大きな革命なのである。


P.235
松岡正剛
本を読むということは、読書を制作し、編集するということなのである。読書を制作編集するとは、読前・読中・読後におこる何かをできるだけ捨てないということだ。その【何か】(筆者傍点)とともに本に付き合うということだ。